#24【台湾雑記 -忘却編-】
あれからどれくらいの月日が経ったのだろう。前回の文章では、俺は台北に到着して、6月の生ぬるい細路地で、薄明るい朝日を浴びながらタバコを吸っていたはずだ。そしてこれから挑む初めての海外ライブの様子や、これから起こるであろうさらば帝国との珍道中に胸を膨らませていたはずだ。そのとき台湾は暑かったはずだ。
いま俺は、残暑すら残っていない9月の東京で、遠い台湾ライブの記憶に想いを馳せている。というよりも、必死で記憶を掘り起こしている。というよりも思い出せない。なんというかもう忘れてしまった。月日は経ってしまったのだ。
確か、ライブは大盛況だった。初めて訪れた台北リボルバー(台北のライブハウス)はスタッフの皆さんも優しくて、音響も素晴らしく、やりにくいことなんかひとつもなかった。さらば帝国もマイティマウンテンズも日本語で歌うバンドだけど、お客さんはすごい熱量で盛り上がってくれた。「今日は外国人がたくさん来てるなぁ」と思ったが、外国人なのはこちらだった。そのくらい普段通りやらせてもらえて、ありがたかった。
記憶の残っている限りでいうと、ライブの熱気もさることながら、ライブ後がすごかった。まず台北リボルバーというライブハウスは、二階がライブ会場になっていて、一階は道路に面したバーになっている。バーはライブイベントとは関係なく営業していて、その日も大勢の人がお酒を飲んだり、笑い合ったり、トランプをしたりしていた。ライブ中も一階のバーでお酒を注文するらしいが、俺はタイミングが合わず行けてなかったので、ライブ後に初めてその場の光景を見た。ライブ会場のある二階から降りてきて、体を横にしないと歩けないほどごった返した店内を抜けると、店の前の路上でも同じくらいの人数がグラス片手に喋っている。
沢山の台湾人と、少し日本人、たまにそれ以外の国の人といろんな話をしたが、思い返すと不思議なことがある。大抵はカタコトの英語や、さらに拙い中国語で会話をしていたはずだが、記憶の中では全部日本語吹き替え版になっているのだ。だから、誰がどこの国の人なのかあまり覚えていない。言葉が足りていなくてもそれだけコミュニケーションが成立していたってことで、つまりそれは「音楽に国境はない」んじゃなくて「国境はない」ってことなのかもしれない。
会場のバーも大盛り上がりだったけど、イベント制作の皆さんが別会場でも打ち上げを用意してくれていて、すぐにその会場に向かわなければならなくなった。その場の人たちとまだまだ話したかったけど、経験上あの雰囲気のまま話していたらそのまま朝になってしまうので、仕方ない。そんな雰囲気も万国共通だった。名残惜しいけど迎えにきてくれた車にメンバー共々乗り込むと、同じく名残惜しいみんなが車の窓を叩く勢いで「バイバイ!」「またね!」とお別れの挨拶。窓を叩かれながら車は強引に夜の台北シティを滑り出した。俺ってビートルズだったんだっけ?
「飛行機の中で文章を書いている」というウソから始まり、ずっと帰国後の自宅で執筆していたこの〈台湾雑記〉でしたが、無事に台湾でのライブ終了後までたどり着いたので、これにて完結としたいと思います。締め切りがないとここまで時差が生まれるということもよく分かりました。タイトルに〈台湾「雑」記〉と名付けた自分に助かりました。タイトル通り雑な記録となっておりますので、ノークレームノーリターンでお願いします。
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