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#8【社会に出てみたら】

  • オクマサハル
  • 3月24日
  • 読了時間: 3分

 一生懸命に生きて、適当に暮らしてきた。好奇心という名の器は常にいっぱいで、一滴たりともこぼしたくなかったが、新しく流れ込んだり湧き出たりするせいで、常にドボドボと溢れているような状態だ。興味の範囲外のことを敵視しているわけではないが、とことん放棄してきたと思う。


 子どもの頃から「社会に出たらそうはいかない」というようなことをよく聞いた。よくそう言われたので、きっとそうなんだろうと思っていた。つまり、そうはいかないんだろうと思っていた。「そうはいかない」っていうのがどういうことなのか、説明しろと言われたら難しいけれど、ニュアンスはなんとなくわかる。遊んでばかりいられないとか、嫌だからといって放棄できないとか、自分の行動に責任を持つとか、そういうやつ。金髪で特攻服を着てバイクを乗り回していたアイツが、髪を黒くしてネクタイをしめて満員電車に揺られるようになる、みたいなやつ。


 もしかしたらと思っていたことが、年々確信に変わりつつある。「社会に出たらそうはいかない」というセリフは、言葉が全部さかさまになっている。「社会」じゃなくて「会社」だし、「出たら」じゃなくて「入ったら」だ。「社会に出たら」ではなく「会社に入ったら」そうはいかないのではないか。


 学校はずいぶん前に卒業して、就職はせず、学生生活から学校を引いたような暮らしをしている。学校がなくなった分の空白部分には税金や社会保険料なども入ってきたが、全体的にはあまり変わりがない。好きなことをたくさんするし、嫌なことも少しはする。輝いたりくすんだり、波に乗ったり溺れたりしながらも、今もこうして生きている。私は社会の一員である。


 社会ってすごく大きい。エリートサラリーマンも、ホームレスも、働いたことのない地主も、前科者も、おしゃれな人もダサい人も、真面目な人もふざけた人も、お世話になっているあの人も、意見の合わないあいつも、みんな社会の一員だ。社会ってこんなに大きなものなのに、それを窮屈に感じるっていうのは変だ。考えられないくらいの異文化や、絶対に分かり合えない人たちが、この社会にはいる。認め合えないのなら、お互いにそっとしておこう。春が来て暖かくなってきた。ワインを飲んで路上で眠ろう。朝が来たらそのまま河川敷に行ってキャッチボールをしよう。なるべく丸い石を見つけよう。それを川に投げ入れて、その音を聴こう。水面がキラキラしているのを見よう。会社に入ったらそうはいかないが、社会に出たらどうとでもなるのだ。

 

 もし読んでいて何か思うことがあったり、書いて欲しいテーマがあるという方は、このHPの問い合わせフォームからお気軽に送ってみてください。書けたら書きます。

(次回は4/14に更新予定です。)

 
 
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